vol. 4
(たなかひでほ) 香港の飲み物もまた独特である。コーヒーと紅茶からして日本とは違ったものだ。ローカルな“茶 餐 廳”(chaa4 chaan1 teng1)でコーヒーを頼むと、アイスはもう既にミルクと砂糖(saa1 tong4)が入った状態で、ホットは砂糖は自分で入れるが、コーヒーの味が濃すぎて苦いので沢山入れないと飲めたものではない。紅茶も同じですごく苦ーく淹れてあるので甘くしないと飲めないのだ。こんだけ濃いとどっちがコーヒーでどっちが紅茶なのかも良くわかんなくなってくる。紅茶は“[女乃]茶”(naai5 chaa4)(ミルクティー)と“檸 檬 茶”(ling4 mung1 chaa4)レモンティーがあって、檸檬茶にはレモンの輪切りがこれでもか!とばかりにたくさん重ねて入れてある。それをガシガシとつぶして飲むのが香港流。“凍 檸 茶”(dung3 ling4 chaa4)(アイスレモンティーの時はストローの他に長い柄のスプーンもついてる。これでつぶせ!と言わんばかりに。かくして、ミルクはたっぷりレモンもたっぷりで、コーヒーや紅茶の味を味わうって感じではなくなってる。でも、それが病みつきになったりするから不思議だ。 そして、その究極の形と言えるのが“鴛 鴦”(yiin1 yeung1)(インヨン)である。これは、コーヒーと紅茶を混ぜた飲みものだ。それを聞くと多くの日本人は顔をしかめるかも知れないが、これが意外においしいのだから世の中分からない。紅茶の味にコーヒーの香り、といったあんばいで悪くないのである。しかし、よくこんなこと思いつくよなあ。香港も中国の文化と西洋や他の文化が鴛鴦=両方合わさったような混とんとした所だからな。何でも混ざってしまうのだ。 コンビニやスーパーで買う飲料で僕が好きなのは、“維 他[女乃]”(wai4 taa1 naai5)(ビタソイ)。いわゆる砂糖入りの豆乳だ。香港では健康飲料の定番としてどこでも売っていて、安いし飲みやすいのでお気に入りだが、砂糖入りなので健康飲料(giin6 hong4 yam2 liiu2)というにはちょっと気になる。しかし、砂糖なしの飲みものって水以外あまり見かけない。お茶だって砂糖入りなのだ。これにはビックリだったけど、特にビビッたのは緑茶(luk9 chaa4)だ。砂糖入りはもちろん、ハチミツ味とかりんご味とか書いてある。何だそれは。全く不可解。でも、無糖(mou5 toung4)と書いてあるのも有った。しかし、そのお茶もジャスミン茶入り。フツーの緑茶は無いのか。なんでジャスミン茶を混ぜる。何か混ぜずにはいられないのか?ジャスミンの香りが勝っちゃっているぞ緑茶に。飲み干したけど。飲み干したついでに、甘い緑茶も飲まず文句ばかり言ってても、何でも試すのがモットーのこのぼくの名がすたるので、リンゴ味に挑戦(tiiu1 jiin3)。リンゴのジュースの味に、後味で緑茶の香りが口の中でホワっと広がる。..広がらなくていいよ。緑茶の香りはいらないんじゃないか?これはやっぱり混ぜずに別々の味がいいなあ、と日本人のぼくには思われるのだが。 ※広東語の発音をつけた単語は日本語と同じ意味です。
illustration
by Setsuko Sekine
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