ILEC'99 提出論文

巻頭ページ日本語訳

【 日本における広東語教育の特徴と方法】


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1.はじめに
 日本で広東語を教えるのは、広東語圏内で教えるのとは本質的に違っている。学習者は自分の母国語に囲まれて生活しているため、広東語を耳にする機会は少なく、広東語を使って話したり読んだり書いたりすることもあまりない。また、広東語の学習が余暇の活動である場合は、学習者は勉強に多くの時間や精力をつぎ込むことができず、教室で教えたことも充分復習することができない。そのため、広東語を教えることは比較的難しい。
 さらに、日本で広東語教育を行う場合、以下のような問題にも直面する。まず日本では、西洋言語に比べて広東語(及びアジアやアフリカの言語)の普及度が低く、社会でも一般に重視されておらず、教育や研究も低調であるように思われる。その結果、教科書、参考書、及び文献も比較的少ない。このことが教師にも学習者にもいっそう困難と不便を感じさせている。もう一つの問題は、学習者の性格である。大部分の学習者は向上心が強く、できるだけ速く広東語を習得することを望み、努力して勉強している。だが、教室内での態度は内向的で、羞恥心が強い。発言は少なく、あまり積極的に質問をせず、討論をする時の雰囲気も活発ではない。
 そこで、教師としては学習者の性格と教育環境を充分認識した上で、学習者を理解し、学習者が困難を克服するのを助け、教育レベルを高めなければならない。様々な方法を採用して教室の雰囲気を活発にし、学習者の興味を引き出すと共に、授業内容についての分析を行い、重点を置くべきものを選び、難しい点に的を絞り、簡潔で効果の高い教授法をまとめ上げることが、たいへん重要なのである。
 本論文では、日本における広東語教育の特徴について分析を行った上で、日本と広東の文化、及び両者の言語の違いを比較することを通して、広東語教育を行う場合に重視する必要のあるキーポイント、ならびに授業方法をまとめたものである。

2.文化的背景
 近代の日本は、経済と科学技術において西洋に追随し、百年前にすでにアジアの先頭を切って列強国となった。第二次世界大戦後は、社会制度や政治のみならず文化や生活方式においても欧米のやり方を模倣し、先進国となってからはますますその傾向を強めている。そのため、文化においても語学教育においても、西欧を重視してアジアを軽視するという風潮が形成されている。

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